◆乳房再建手術③(5年分の平たい思い出)
2013年7月 乳がんの手術を受ける時、同時再建するか悩んだあげく「しない」と決めてから5年。もうすぐ、痩せた男子中学生のような平たい胸から晴れて卒業を迎えるのである(予定)。もちろんこの平らなものに全く未練はないけれど、実は5年間という期間は愛着を覚えるには十分な長さであり、意外にも若干寂しささえ感じ思い出がよみがえってくる。
手術後、君(平らになった胸)を初めて見たのはその数日後だった。小さなテープが手術傷跡の右から左までにビッシリ貼ってあった。どれだけショックを受けるかと覚悟して対面したものの、君は思ったよりシンプルな姿で私はすんなりと受け入れることができた。手術後は傷の痛みも辛くて、寝たり起きたり寝返りしたり辛いこともあった。下着やパット、洋服選びにも困ったし、大好きな温泉に入る事に躊躇する時もあった。入浴着を身に着けて温泉に入ったら「温泉に服を着ている人がいる」と通報され、入浴着をつけずに温泉に入ったら「あんたは(普通に温泉に入るって)スゲーな」と身内に驚かれた。
君との生活は不便しかなく得るものなど何もない。そう思っていたけれど、一つ活躍した事もあった。「乳房全摘手術を受けた後、こわくて自分の胸を見ることができない」と言われるサバイバーさんに心の準備のために「披露」した事である。彼女は君を見て「なんか思ったよりきれい」と言って少し気持ちが前向きになったようだった。
思えばこの5年間、雨の日も風の日も雪の日も、嬉しい時も辛い時も君とともに過ごし、2度の出産を迎え、子育てをし、成長した子供たちとお風呂に入った。君のおかげで肌着を開発し下着屋Cloveを立ち上げる事もできた。
考えてみたら、君と出会ったおかげで色んなことにチャレンジできてたんだな。誰に見せることもないけれど最後に記念写真をパシャリ。これからの2か月間、君と過ごした日々を思いながら、いざサヨナラを迎えよう。
胸のない5年間は時々不便だけど不幸じゃない。むしろ貴重な体験がたくさんできた、ありがとね。
乳がん治療後、ホットフラッシュの悩みに「サラッと肌着!」試着できます✧